梅土佐豆腐です。
「みをつくし料理帖」第3巻「想い雲」に収録されている
『豊年星----「う」尽くし』に出てくる一品です。
皿の上で、油を吸った茶色の衣がちりちりと鳴っている。
「こちらの揚げたても召し上がってください。種を取って叩いた梅干しを挟み、鰹節をまぶして油で揚げたお豆腐。梅土佐豆腐です」
ごま油と鰹節の良い香りのする熱々の豆腐に、種市は、かぶりついた。
口の中を火傷しないよう、はふはふと咀嚼し、ごくりと飲み込むと身を捩って叫んだ。
「こいつぁいけねぇ、こいつはいけねぇよぉ、お澪坊」
種市の「こいつぁいけねぇ」が飛び出したことで、ふきがぴょんと飛び跳ねた。芳はと見ると、久々に笑顔になっている。澪は安堵のあまり、ほっと胸を撫で下した。
読んだだけで食べたくなりました。
登場する料理は、すったもんだした挙句の水戸黄門の印籠のようで「待ってました」と叫びたくなる。
そして、作ってみたくなるのです。
文庫の末尾には、このようにレシピが載っているのも嬉しい。
「忍び瓜」と同様、早速作ってみました。
しかし初回は惨憺たる仕上がり。
豆腐の水切り具合と、衣 ( 小麦粉・卵白・かつお節 ) の加減が悪かったか、酷いビジュアルです。
でも味はいいのです。
豆腐の間に挟んだ梅干しの塩気だけで食べさせるなんてさ。
豆腐・梅干し・鰹節が合わないわけはない。
2日後にリベンジしたのがこちら⤵
切ってみた。
食感も味もパーフェクト。
我が家の夏の定番になること間違いなしの一品です。
それで。
ここからが本題。
以前お話したナイスガイAKIRA君に、梅土佐豆腐の話をしました。
にゃんこの集会場所で、暗がりでです。
筋トレ中のAKIRA君、
以前はタンパク質や炭水化物をたっぷりと摂取しなければいけない時期だったんだそうですが、
現在は減量期といって食事制限の時期なんだとか。
「豆腐がいいんじゃない?」
という何気のひとことにAKIRA君のお目目がクリッとなりました。
梅土佐豆腐、どうやって作るかザックリ教えました。
以前なら、材料をキチンと伝え、完成図の写真などなければ到底作り始めなかったと思います。
ですから、私がブログにアップしてから取り組むものと思ってました。
ところがです。
「作ってみました」のメールが翌朝、届きました。
細かいレシピも、分量もないのに、す、す、凄いじゃないか。
メールの本文には
「がしかし! 想像と何かちがうので師匠のブログ楽しみにしてます」とある。
師匠じゃないが、気がついた点を返信しました。
「豆腐の水切りが足りなかったのか、 フライパンの油が熱しきれていなかったからかも知れませんね。
油が熱くならない内に豆腐を入れ、ジュッといわない内に 動かしてしまったのではないでしょうか。
衣をつけたもののソテーは、 熱い油に投入して、しばらくは触らないのがコツです。」
すると、するとですよ、
その日の内に送られてきたのがコレです。⤵
美しいじゃないか。
私のより、数倍ウマそう。
断面はわざと ( ? ) 衣をつけないで、豆腐と梅干しの層が見えるなんてところは、ロブションみたいだ。
AKIRA君、君はなんて奴だ。
「こいつぁいけねぇ、こいつぁいけねぇよぉ、AKIRA坊」