Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

北村 薫 編纂『謎のギャラリー 特別室』その他の作品

 

『謎のギャラリー特別室』に収録の、これまでにお話した以外の作品の備忘録です。

「なにもないねこ」別役実

別役さんはシュールなお話を得意とする劇作家。

代表作『マッチ売りの少女』は、不条理劇として人気の作品。

静かで怖くてしみる作品を作る別役さんだから、これも興味深い。

ちょっと寂しい、かわいそうなねこの話でした。

 

「猫の話」梅崎春生

こういう話、嫌いです。猫を通して主人公の貧困と苦悩をいいたいのでしょうが、

そういうことに動物の哀れさを利用する作品は嫌いです。

城崎にて、同様苦手な作品です。

私を打ちのめしたその表現力もまた志賀直哉を思わせる。

梅崎作品、読んでみようかなという気になった。

 

「ねずみ狩り」ヘンリー・カットナー

墓守りが、墓荒らしをするお話。

大きなねずみと、墓守りの、お宝の奪い合い。想像力を試される作品。

ぶっ飛びすぎてるところが、前の「猫の話」と違っていい。

 

「煙の環」クレイグ・ライス

クレイグ・ライスのマローン弁護士シリーズのひとつみたいです。

旦那さんを拳銃で撃ってしまった女の人を弁護しようとするマローンに、

女が、そんなことで殺してしまったのかという話をする。

しかし、そんなことが、そんなことではなかった。

マローンシリーズを読んでみたらもっと世界感が味わえるかもと気になる作品でした。

 

「ナツメグの味」ジョン・コリア

ある研究所に、新しい研究員が来た。

古株の二人は、彼をお茶に誘い親切にしてやった。

新人は、神経質そうな男で人付き合いをしたがらないように見えた。

男の過去がわかった。

男は殺人事件の容疑者だったが、証拠不十分で不起訴になった。

しかし、周囲の噂で男は職場を転々としていたのだ。

二人の親切に男は二人を自宅に招き、カクテルを作ってもてなす。

そのカクテルの味から二人は、男の謎を・・・

 

「やさしいお願い」樹下太郎

過失は全く一方的に若者の側にあった。歩道を歩いている少年を彼はひき殺してしまったのである。

しかし、被害者の母親は

「おかねは一銭もいりません」というのだった。

「そのかわりひとつだけお願いがあります」

「毎月十三日が来たら、このはがきを一枚ずつポストに投げ入れてくれればいいのです」

五年間。だから、はがきは六十枚あった。

 

「歌の作り方」坂田寛夫

学級会で、歌の作りっこをすることになった。

いいだしっぺは、キタナイ星の宇宙人ゲジゲジというあだなのタケジだった。

高木よし子はクラスの男子の一番人気。ぼくも密によし子を仲良くなりたいと思っているひとりだったが、どうやらタケジもよし子に気があるらしい。

学級の歌は、タケジが歌詞を書き、ピアノのうまいよし子が作曲することになった。

 

「エリナーの肖像」マージャリー・アラン

新婚の「わたし」夫婦は、由緒あるグラマーシーの屋敷を借りられることになった。持主のメイヒュー大佐は、外国から帰ったばかり。なぜ人に貸すかというと、愛する娘が留守中にそこで死んでしまったからだった。

グラマーシーを訪れた「わたし」は、暖炉の上にある娘の肖像画を見る。

娘-エリナーは足が不自由で、車椅子に乗っていた。彼女はどうして死んでしまったのか。その答えはエリナーの肖像画に描かれていたのだった。

 

全編を通して、しみいるような話でした。

ちょっと怖くて、ゾクっとするようなエッセンスが効いていて、北村さんのツボのかけらを感じられたようにも思いました。

かけらのひとしずくでしょうが。

読了と同時期に、図書館から予約待ちしていた『謎のギャラリー』の確保のメールが届きました。

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右が読了の特別室、青本とします。

左がそれよりも先に出た本、赤本とします。

 

本当は、左の赤本を先に読めばよかったらしい。

赤本は、特別室 ( 青本 ) の解説になっていました。

解説といっても、さらりと流しているものから、内容に深く触れているものまでありました。

そういう意味では、私が読んだ順番で良かったと思います。

実際の作品を青本で読んで、それから答え合わせの意味で、北村さんの解説が書かれた赤本を読む。

それが正解だと思います私にとって。

 

 

特別室に納められた作品は、今では入手困難なものばかりらしい。

それを労せず読めるのだから、有難いことです。

 

だかしかし。

赤本の情報量はとてつもない。

今回読んだ青本の作品の15倍 (190作) の作品が紹介されている。

北村さんの読書量に圧倒されるとともに「全部読みたいけど無理無理無理」と思います。

因みに、北村さんの「謎のギャラリー」は、続編が3冊出ているそうな。

なんかわたし、とんでもない扉を開けてしまったみたいです。

 

 

北村薫(Kitamura Kaoru)

 『謎のギャラリー特別室II』 マガジンハウス 1998/11/19

第七会場 収録作品

「私のノアの箱舟」 M・B・ゴフスタイン

「光と影」 フョードル・ソログープ

「死者のポケットの中には」 ジャック・フィニイ

「二十六階の恐怖」 ドナルド・ホーニグ

「親指魚」 山下明生

「狐になった夫人」デイヴィッド・ガーネット

「お父ちゃん似」ブライアン・オサリヴァン

 

『謎のギャラリー特別室III』マガジンハウス 1999/ 5/20

第八会場 収録作品

「大人の絵本」 宇野千代

「夏の花火と私の死体」 乙一

「定期巡視」 ジェイムズ・B・ヘンドリクス

「猫じゃ猫じゃ」 古銭信二

「これが人生だ」 シャーリィ・ジャクスン

 

『謎のギャラリー最後の部屋』マガジンハウス 1999/ 5/20

第九会場 収録作品

「四つの文字」 林房雄

「埃だらけの抽斗」ハリイ・ミューヘイム

「かくれんぼう」 西村玲子

「絶壁」 城昌幸

「真田風雲録」 福田善之

 

 

 

本日の朝ごはん

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本日の夜ごはん

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