北村 薫 編纂の『謎のギャラリー 特別室』の中に収録されている作品について
一番目に登場する作品『遊びの時間は終わらない』
これは面白いです
冒頭の風景描写がちょっと幼さも感じますが、設定の面白さにどんどんとハマり込んでしまいました。
物語は、週末の吉祥寺の銀行に、レインコートを着た男が入るところから始まります。
男はカウンターの上にバッグを乗せ、ポケットから一枚の紙きれを取りだし、窓口案内嬢に見せます。
「銃を持っている。黙って、この鞄に金を詰めろ」
銀行強盗事件の話なのか、、、、
レインコートの男は奇妙な形のライフルを出し、入り口の男に向けて、叫びます。
「ばーん」
《銃声が響く》ではありません。男が口で《ばーんと言う》のです。
防犯訓練だった
防犯訓練でした、マスコミ関係者も集めたかなり大がかりな。
犯人役の平田刑事は、入り口から入って来た深川刑事に逮捕、、、
のハズだったのが、
深川刑事は、犯人w-平田に撃たれて死んでしまいます。
平田刑事は言う。
「深川、君は死んだんだ。5mの至近距離から弾を受けたんだから、ほとんど即死だ」
「そうだったな。そういうのもアリだったんだな」
深川は照れ笑いをして、その場に横になった。
署長が発案した今回の防犯訓練には筋書きがなかった。
事前に打ち合わされたのは、襲撃目標と日時、それに銀行強盗の性格や武器だけ。
それを踏まえて、犯人役の平田は襲撃方法を練った。
犯人の行動に応じて、臨機応変に行動する、これこそ生きた訓練だと、二時間前の記者会見で、署長は言った。
ところが、犯人-平田は手ごわかった。
簡単に終わるはずの訓練が、空気を読まない真面目一徹の平田刑事の奮闘 ( ? ) により、思いも寄らない大騒ぎになる。
いやもう、笑えます。
とにかく「ばーん」ですからね。
「ばーん」と言われた人は、首に《死体》という紙を下げられ横にならなきゃいけない。
途中でやめたら、警察全体が大恥をかくことになるから「遊びの時間は終わらない」ワケです。
この作品は、1985年「小説新潮」に掲載されました。
作者の都井邦彦氏は小説新潮新人賞を受賞したそうです。
奇想天外なストーリーは、すぐさま元木雅弘主演で映画化されました。
これは面白そう、是非観てみよう!
北村さんの『謎のギャラリー』は本当にありがたい。
知らなかった名作に出会わせてくれました。
でも。
『謎のギャラリー特別室』の巻末に、こんな記述がありました。
収録にあたりまして、事情により次の方々には予め連絡することができませんでした。
都井邦彦さん、高梨正伸さん、増田武さん、ご覧いただけましたら、
恐れ要りますがマガジンハウス書籍編集部までご連絡ください。
つまり。
都井さん含む3名の方には、連絡が取れなかったらしいです。
素朴な疑問がわきました。
承諾を得られなくても本に収録することは出来るんだろうか?
家人に聞いたら、あり得るとのこと。
手を尽くして調べて調べて、探して探して、それでも見つからなかった場合でも、
本に載せることはあるんだそうな。
ふーーん。
高梨正伸さんは、「ミステリ・マガジン」1967年8月号に掲載されたヘンリィ・カットナー『ねずみ狩り』の翻訳者。
増田武さんは、「エラリー・クイーンズ・ミテスリ・マガジン」1960年8月に掲載されたグレイグ・ライス『煙の環』の翻訳者。
お二方とも、掲載年から計算しても50年以上前のお仕事になります。
翻訳者としての活動をやめてしまったかも知れないし、物故者かも知れません。
※ ヘンリー・カットナー(1915~1958) 、グレイグ・ライス (1908~1957) は
亡くなられて62年ほど、まだ著作権期限が8年ほど。
出版社が探しても見つからなかったのですから、高梨さん、増田さんをネット検索してもダメです。
でも。。。お二人はともかく。
出版&新人賞受賞から35年しか経っていない都井さんの消息がわからないなんて。
仮にもう、作家活動をやめていらしたにしても、
「遊びの時間は終わらない」は、未だにYouTube配信や、映画配信がされているのだから、
著作権使用料も発生してるはず。
世の中が便利になり、ネットで調べれば市井の人でない限り、情報は得られると思いきや、
探しても見つからないこともあるのかと驚きました。
そういうこともあるんですな。
本木雅弘主演 映画⤵
小西博之主演でドラマ化もされたようです。
こっちは全編、YouTubeで見られるみたい⤵
本日の夜ごはん
鶏手羽塩焼き
京しろ菜とお揚げの白だし煮
先日、小松菜と揚げを白だしで炊いたら、あまりの美味しさに悶絶。
今日は、京しろ菜というのでやってみました。
これもおいしい、白だしで炊くとうーんおいしい! お揚げも必須の総菜です。
壬生菜と塩昆布と胡桃の炒めもの
壬生菜のきゅっとした味に、胡桃のぬっとした味を塩昆布がまとめてくれました。
いい組み合わせです。ほんに。