昨日『パラサイト 半地下の家族』をやっと観ました。
いや~これは凄い。面白い。感動しました。
はてなの皆様の中にも大勢さん、見た人がいらして記事も書いてらっしゃるし、
私もBOSSから「面白いよ、絶対に観たらいい」と推薦され、気になっていた作品です。
でも、なかなか行けなかった。
まさか今ごろ。
アカデミー賞受賞も4部門受賞したという、そんなタイミングで観ることになろうとは。。。
冒頭から笑いました
何だろう。
救いのない貧しい生活から始まってるのに、笑えるエピソード満載です。
なんだかんだいってても、家族は家長の父さんを尊敬してて、一致団結しているのです。
この映画で私は、天国と地獄をドカンとつきつけられました。
文字通りでいうなら、貧富の差、格差社会、闇と光ですけど、
不思議なことに裕福な一家が幸せな象徴ではありませんでした。
何故なら。
貧乏のキム家の人たちが、底抜けに明るいから。
彼らは、低所得者が住む低い土地の、さらに半地下に住んでいます。
家の中で一番高い場所はトイレ。
携帯の電波は、専ら上の階のおばさんからくすねている。
映画の冒頭は、そんなシーンから始まりました。⤵
兄「まずい もうタダでWi-Fiは使えない
キジョン 上の階のおばさんがパスワードを設定した」
妹「パスワード? 1から9まで押した?」
兄「ダメだ」
妹「9から1も」
兄「つながらない クソ メールも」
母「カカオトークも使えない?」
兄「ああ」
母「あんた キム・ギテク タヌキ寝入りしないでよ どう思う?」
兄「スマホもつながらない Wi-Fiもつながらない」
母「計画はあるの?」
父「ギウ」
兄「父さん」
父「高く上げれば電波が入る 隅々まで細かく動かして探すんだ
チクショウ 便所コオロギだ」
兄「ここだ イケた」
妹「本当? つながった?」
兄「ほら つながったろ? コーヒーランド 2G 新しいカフェか?」
妹「私のはダメ」
兄「ここに上がれよ」
見事、携帯の電波をゲットした家族は、
お父さんの「Wi-Fi 万歳!」というコールでごはんを食べはじめます。
通りで消毒薬を散布し始めると、窓閉めるんじゃなくて、、、
「タダで消毒してくれる」と窓を全開にして、浴びる。
父さんの計画に、みんなが従います。
そんな一家に転機が訪れる。
息子が友達からひきついだアルバイトが、高台の金持ちの家--パク家の娘の家庭教師でした。
といっても息子、大学も出てません。
4浪している息子に、友達は「4回も受験してるんだから、受験のプロだよ」と言う。
妹はチャチャッと兄ちゃんの為に、大学のお免状を偽造してくれるし、
お父ちゃんは、そんな息子たちを誇らしく思ってる。
とにかくこの親子、とっても仲が良い。
父ちゃんは息子を可愛がり、、、「さあ 息子 これも食えよ」
息子も父ちゃんを尊敬し、慕っている。
その信頼関係は最後の最後まで、ラストの瞬間まで続く。
そこが感動的なのです。
日本の親子とは違います。
やっぱり儒教の国ですから、子供が親を尊敬する態度、
特に息子の男親に対する礼儀正しさは、今日の日本にはないものです。
年長者を尊ぶという韓国の道徳体系が、この映画ではむしろ貧しい家の方で表現されているのですが、
それは監督の狙いなのでしょうか。
パク家の方は金持ちといっても成金だし、まだ息子は小さいということもあるしで、
親は子どもを甘やかし放題、子どももキチンと挨拶なんて出来てません。
印象的なのは、このシーン。
パク家の男の子は、父親に甘えてこんなお辞儀はしないのに、
キム家の妹が家庭教師に来てしこんだんでしょう、
先生に対して ( 年長者に対する正式な ) お辞儀をさせられていました。
さて。
この映画は公開に際し「ネタバレしないでね」というキャンペーンを繰り広げてきたことでも有名です。
パンフレットにも、ポン・ジュノ監督が 1ページを割いて「ネタバレ回避のお願い」を書いています。
そうキャンペーンすればするほど、映画にも興味が出て、劇場に足を運ぶだろう。
「うまい戦略だ」とも思いました。
でも、映画を観て納得。
これはネタをバレされたら半減なんてものではないですから。
よく考えれば、ポン・ジュノ監督じゃなくとも、ネタをばらされて喜ぶ映画関係者はいないでしょうけど、ね。
まあ、そういう縛り ( お願い ) を受けて感想を書くのは、いつもより苦労します。
「ばらしてやろう」って気はなくても、感動を伝える上で、どうしても筋書きの説明が必要だからです。
でもなんとか頑張ってみます。うまく伝わるか不安だけれど。
私がこの作品で一番感動したのは、父と息子の関係の美しさ、家族を想う気持ちの尊さについてでした。
そして一番考えさせられたのは、匂いについてでした。
遠い記憶をたどり思春期を思うに、何よりも気にしたのは《臭いと言われやしまいか》だったかも。
女の子だったら、お友だちから「臭い」と言われるのが一番嫌なんじゃないかしら。
「太ってる」とか「ブスだ」とかって、外見をけなされるより一等傷つくんじゃないかと思います。
映画の中にも「匂い」というキーワードが出てきます。
おじさんだって、自分の匂いに顔をしかめられるのって傷つくでしょう。
彼にとって《匂い》は、単純に体臭だけでなく、自分の住んでいる環境や、自分のおかれた立場を象徴しているものであり、「なんか変な匂いがする」と言われることは、人格を全否定されるに等しかったのではないかしら。
監督が「匂い」をヒューチャーしたのは、そんな狙いじゃないかしら。
映画では、具体的にどんな匂いかを表すことは出来ません。
だからこそ、客は想像します。
想像して、、、すえたような匂いなのかな、かび臭い匂いなのかな、〇所臭い匂いなのかなどなど、、、各々、自分が嗅いだことのある匂いの記憶を思い起こして最大限の想像力を働かせます。
その方が、リアルに目で見せるよりもよっぽど効果的であるように思います。
貧乏父ちゃんのあのマックスの怒りは、自分の子供に対する金持父ちゃんの非礼もあるでしょうが、
匂いに端を発する人格否定にあったのではないかと思います。
「パラサイト」が、数々の賞を受賞し、アカデミー賞作品賞をも獲得した理由は、
どんでん返しが凄かったとか、格差社会を見事に描いたとかということより、
人間の感情のひだの細部に至るまで、監督がメスをいれて緻密に描いたからのように思います。
もう一度観たい!
家政婦さんが北の人なのか、あの、北の国の女性アナウンサーのような演説は何だったのか、ギャグなのか、深い意味があるのかもチェックしたい。
兄が石をわざわざ持参する意味もわからなかったので知りたいです。
是非とも観たい、劇場で。
今回は、私ひとりで行きましたが、MOURI を劇場に引っぱって二人で観たい。
しばらくすればDVDになるからとそれまで待とうと思う映画も沢山あります。
でも「パラサイト」は、映画館で観た方が絶対にいい。
清潔で明るい金持ちの家の広々とした空間も、
かび臭くごみごみした貧乏な家の鬱屈としたあの圧迫感も、
テレビの画面では、味わい尽くせないと思うから。