Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

寺地はるな『ガラスの海を渡る舟』

 

寺地はるな 著『ガラスの海を渡る舟』を読了。

この本は、敬愛する二人のブロガーさんが紹介していらしたものだ。

よんばばさんつるひめさんと私は、同年代である。

お二人の紹介する本や映画やドラマは常に私のストライクゾーンのど真ん中なので、

この本も絶対に読もうと思った。

 

 

いくら同じ年頃でも感受性が同じわけはない。

何万人もいるはてなユーザーで、趣味嗜好が合う人と出会えたのは奇跡だ。

お二人がどう読まれた ( 観られた) かに、常に興味が絶えず、毎回刺激をいただいたり、知らない世界にいざなってくださるお二人には感謝しています。

 

 

いつものように我が町の図書館は、新刊や人気本の予約は半月待ち。

やっと手に取れた時には、お二人は既に先を歩いていらっしゃる。

今回も周回おくれの話題だし、あらすじや解説はお上手な二人にお任せで、

ざっくりと、私なりに思ったことを書き散らすばかりである。

 

物語の舞台は、大阪・心斎橋からほど近い場所にある「空堀商店街」のガラス工房。

そこで、工房と教室を営む兄妹の話である。

 

兄の道は、幼い頃から落ち着きがなくコミュニケーションが苦手で「みんな」に協調したり、他人の気持を共感したりできない。

妹の羽衣子ういこは兄とは対照的に何事もそつなくこなせるが、「特別なにか」が見つけられずにいる。

正反対の性格の二人は互いに苦手意識を抱いていて、祖父の遺言で共に工房を引き継ぐことになってからも、衝突が絶えなかった。

 

そんな二人の元に、変わった依頼が舞い込む。

それは、「ガラスの骨壺が欲しい」というものであった。

 

 

《比べる》がたくさん登場し、ひとつのテーマになっている

この本には、人と比べるというシチュエーションがよく出て来る。

例えば羽衣子は、手のかかる ( 発達障害と思われる ) 兄に母の関心を持っていかれて、構ってもらえない寂しさを抱いて育つ。そんな兄がガラス職人として自分より才能があると焦りを感じている。

 

二人の父親もまた世間の子と息子とを比べている。

息子・道のことを「どうして普通にできないんだ」と疎んじ、家を出て行ってしまった。

 

 

祖父と その友人のガラス職人・繁實さんは、兄妹にそっと寄り添ってくれる人だった。

二人の確執を見ていた祖父は、羽衣子にこう言った。

ひとりひとり違うという状態こそが『ふつう』なんや

 

繁實さんの言葉も胸に沁みる。

「でもわたしって、は、道には、自分にない、その、才能がある、と思って。もうあんまり張り合うのはやめようって、何年もかかって、道を認めることができたんです」

「才能? ははは」

繁實さんが肩を揺すって笑い、それから苦しそうに息を吐いた。

まだ体調が万全ではないのかもしれない。

「ないよ。道に特別な才能なんかない」

「だって、道は」

「人と違うから、か?」

繁實さんはもう笑っていなかった。まっすぐに見つめられて、思わず目を逸らした。

「発達障害やったっけ。俺もよう知らんけど」

「いえ、検査を受けてないから、はっきりとは」

まあそれはどっちでもええねん、と繁實さんが首を振る。

「俺にとっては、道は道やからな。診断がどうとか、心底どうでもいい。俺は道にどんな障害があるかやのうて、道自身が今なにを見て、なにを考えてるかが知りたい、認めるってどういうことや。そら、なんかの障害とセットで特別な才能に恵まれた人間もおるんやろ。でも、障害があるからかならず才能もあるはず、みたいな考え方、俺は嫌いや。それこそが差別と違うんか。あなたは他人と違った人間だけど、特別ななにをを持ってますね、ならこの世に存在していいですよ、認めてあげますよって言うてるみたいで、ぞっとするなあ」

p.202より

 

兄弟姉妹がいる人で同じ気持ちを抱く人は多いだろう。

「なんで、お姉ちゃんばっかり新しい服なの?」とか、

「なんで、私ばっかり叱られるの?」とか。。。

大抵自分の方が《損な役回り》だと思うようだが、大人になり何かの機会に兄弟姉妹 話す機会があった時、ふと誤解が溶けたり、相手も相手なりの悩みがあったことがわかったりする。

 

 

この兄妹も、両親祖父母がいなくなり二人っきりになった時に、相手の良さに気づいていく。

そのキッカケになるのが、客への対応や知人からの仕打ちに対する反応にあり、

兄と妹でその受け止め方が違うことが、お互いに段々とわかってくる。

他人との関わり方を共有することで絆が結ばれていったのである。

 

 

この本には、大切な人と別れた人が沢山でてくる。

娘を失くした母、愛犬を失くした女性、事故で恋人を失くした女性などなど。

そんな人たちに対しての寄り添い方に、兄には兄の、妹には妹なりの違いがあることにハッとさせられた。

どちらが良い悪いではなく、違いがあることが丁寧に描かれている場面が良かった。

「ひとりひとり違うという状態こそが『ふつう』なんや」

これこそ、祖父が言った言葉だ。

 

 

素晴らしい装丁

表紙の舟には、男の子がひとり

 

本を読み終わって裏表紙を見ると、男女 ( 兄妹 ) が舟に乗っていました

装丁:岡本歌織

イラスト:ゲレンデ

 

 

ひとつだけ残念なこと

個人的にひとつ残念に思うことがある。

登場人物が、良い人と酷い人と極端に書き分けられているように感じたことだ。

羽衣子の彼氏や、例の連れ子の、下劣な言動行動は気分が悪くなる。

そして、そんな極端な人物設定が果たして必要だったのだろうかと疑問を感じた。

 

極悪な人にも、そうならざるを得ない事情もあるのではないかと思うから、

一面性しかみえないそれらの人物描写に対して残念な気持ちが生じてしまったのである。

 

 

本日の昼ごはん

魚介たっぷりのトマトソースパスタ

冷凍のえび・いか・あさりに、玉ねぎ、しめじ、ズッキーニを使い、

トマト缶と赤ワインで濃厚さをプラス。

 

練馬IMAで買ってきたイカをさばく。

前回よりちょっと固いイカだった。

冷凍庫や野菜室に食材があふれるとテンションがあがります

 

 

 

本日の夜ごはん

サバの味噌煮、春巻き、明太子マヨパスタ

 

かつおとパクチー、みょうがのサラダ

 

美味しそうな椎茸、焼きました

 

椎茸は、出汁&醤油&みりんを、笠に入れて焼きます。

それだけで大ごちそう!