Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

百年文庫《群》を読む

 

図書館で借りてきた百年文庫の《群》を読み終えました。

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《群》のラインナップに、内田百閒の「件」が、なかったのがちょっと意外です。

群衆にあおられ困った件の様子がこのテーマにピッタリだと思ったもので。

内田百閒 『件』 『豹』 - garadanikki

しかし選者は、《影》のラインナップに「とおぼえ」を入れたかったのだから仕方がない。

それもわかるし。。。

 

さて、この本で私は三人の作家に出会いました。

オーウェルもモームも、今夢中になっているイギリス文学 (1900年初頭 ) で活躍した人です。

日本でいえば明治後期から大正にかけての人たちです。

 

オーウェルもモームもトマス・ハーディーと時代的にすれ違っていて、

モームはハーディーをモデルに小説を書いて、物議をかもしたらしい。

※ オーウェルが1903~1950、モームが1874~1965、ハーディーが1840~1926。

 

何だかまた興味あるものの連鎖です。

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ジョージ・オーウェル 著『象を撃つ』

主人公はイギリス人の警官です。

作者自身、20代前半にビルマに警察官として派遣されていたので、この話は当時の体験をもとに書かれたものと思われます。

当時のビルマは、イギリスの植民地であったインドに支配されていたので当然統治はイギリス人です。しかし完全にアウェーの土地ですから、警官といえども彼の立場は民衆に尊敬されるものではないようです。

そんな中、町で事件が起こります。

「さかり」のついた象が暴れているというのです。

彼は現場に向かいますが、ぬかるみに象に踏まれた遺体があったため、ライフルを用意します。

すると野次馬が彼の後をつけてきて、気がつくと彼の後ろは黒山の人だかりができていました。

しかし象のもとへたどり着くと、象は静かになっていて暴れる気配はありません。

彼は「象使いが来るまで静観しよう」としますが、野次馬たちは象が撃たれるのを、今か今かと楽しみにしている様子です。

誰もそう言っている訳でもないが、彼らの視線や息づかいが「撃て 撃て」と言っているような圧力を感じます。

仕方がなく彼はライフルを発射。しかし急所がはずれたのか象は死にません。

続けざまに何発か打ち、弾が無くなりますが、それでも象はまだ生きています。

彼は小型の拳銃で苦しみにあえぐ象の心臓と口内に撃ち込みます、それでも象は死にません。

ついに彼はその場から離れます、象に群がる野次馬をあとにして。

 

武田麟太郎 著『日本三文オペラ』

三階建ての安普請のアパートに住む人たちの人間模様を描いた作品です。

大家と妻の話、老女と老人の老いらくの恋の話、カフェの女給と色事師の話、性悪女にたぶらかされる料理人の話、実は経営者と内通している労働争議の指導者の話、などが面白く悲しく淡々と描かれていきます。

プロレタリア作家の武田麟太郎ですが、転向後に書かれたものでしょう。

貧しいが逞しく生きる市井の人を描く目線に、島木健作と通ずるものを感じました。

島木健作と武田麟太郎の共通点は沢山ありそうです、その話は別の機会に。

 

サマセット・モーム 著『マッキントッシュ』

静養をかねて太平洋のサモア諸島に渡り行政官の助手となってマッキントッシュ青年は、上司のウォーカーのそりが合わない。

ウォーカーはサモア諸島タルア島を25年に渡り管理してきた行政官で、成り上がり者で粗野で下品でわがままで独裁的であった。

ある日ウォーカーは、島の道路工事をサモア本島の5分の1の賃金で島民にやらせようとする。

島民の中に、サモア本島で学をつんで戻ってきた若者がいた。

若者は島民を扇動して「100ポンドでなければやりません」と断る。

怒ったウォーカーは、ある方法で仕返しをする。

マッキントッシュはウォーカーの行為を軽蔑する。

その思いが悲劇的な事件につながるのだが、その結末はマッキントッシュが思いもかけぬものだった。

 

 

三作を読んでみて思ったこと

象を撃つは、あまり好みの作品ではありません。

イギリスの植民地での生活は、ストレスのたまるものなのでしょうが、

その苦しさをこの作品で共鳴することは出来ませんでした。

 

特に気になったのは冒頭の文章です。

「低地ビルマのモウルメインの町では、わたしは大勢の人々の嫌われものだった」

と、始まるのですが、最初にそれを言ってしまうのは如何なものかと思います。

そういうことは、展開や描写で読者にわからせるのが《小説》なのではないかと思ったからです。

イギリスの植民地を舞台にした小説には興味があるだけに、ちょっと残念に思いました。

 

日本三文オペラは、好きな作品でした。

人を見る目の温かさがありながら、べたべたとしていない。

島木さんもそうですが、プロレタリア運動にのめり込み、転向を機に挫折し、

筆をにぎり直した作家は、どうしてこう優しい視点に立てるのかと思います。

共産主義の運動からスイッチを切りかえて文学に向った作家特有のものと思います。

好きです、こういう優しい目線のお話。

映画で見たくなりました。

 

マッキントッシュは、一番好きです。

青年の目に映る《人間の姿》というのはまだまだ浅い。

ウォーカー老人のいぎたなさの裏にある魅力は、若い彼にはわからなかったのです。

読んでいる内に、こんなにも人への見方が変わっていくのかとドキドキさせられました。

モームのストーリー展開の見事さにノックアウトされました。

 

 

 

 

 

本日の夜ごはん

カレーライス

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実は先日、こんな景品が溜まってしまいましたの。

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サッポロ生ビールを箱買いしたら、それに景品が。。。

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6缶パックに1個。ひと箱で4個だから、ふた箱で8個もある!

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カレーはいつもゴールデンカレーを買うんですが、

これ、何とか消化しないとならない。

 

グリコのカレー、これもなかなか美味しいです。

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今日は2個使ったから、まだ6個ある。

当分カレーはグリコです。