藤岡陽子著『おしょりん』を読了。
「おしょりん」初めて聞く言葉だが福井県の方言で、田畑を覆う雪が固く凍った状態を指すのだそうだ。
福井の鯖江市は国産めがねフレームのシェア95%を占めるが、
最初に眼鏡づくりを始めたのは、鯖江市に隣接する麻生津地区だったようで、
この本は、麻生津村 ( 生野 ) で眼鏡作りの礎を築いた人の奮闘記である。
史実では《増永五左衛門が事業を始めた》と記されるが、
本作はそこに実弟と妻のエピソードが盛り込まれている。
五左衛門の弟で東京に出ていた幸八が、故郷の将来を考え兄に眼鏡作りをすすめる、
幸八と五左衛門の妻むめとは淡い恋心をいだきあっていた、といった内容だ。
この弟の立ち位置がとても重要。
故郷を離れた次男の視点が、眼鏡づくりのキッカケになっているからだ。
当時は家長となる長男以外の男子は、家を離れて独立しなければならず、
次男三男は、職を求めて故郷を離れるものが多かった。
五左衛門の弟・幸八もその1人で、彼は大阪や東京に出て世の流れを見ることになる。
幸八は「故郷・生野も新しいことを始めなければ立ちいかなくなる」と考え、
兄の五左衛門に眼鏡作りを提案する。
最初は乗り気ではなかった五左衛門だったが、貧しい村の雇用問題の解決にもつながると一念発起。
だが村民の同意はなかなか得られない。
このように置かれた立場や、育った環境によって《新しいことを始める必要性》を感じられるかどうかも違ってくる。
この本は、人々の考え方の違いや気持ちの流れがよく描かれていて面白かった。
この本を読もうと思ったキッカケは、Bettyさんのブログを読ませていただいたことによる。
映画「おしょりん」は、五左衛門を小泉孝太郎、幸八を森崎ウィン、
五左衛門の妻・むめを北乃きいが演じているらしい。
映画の方も、近々ぜひ観たいと思っている。
本日の昼ごはん
明太子パスタ
今日は海苔バージョン
本日の夜ごはん
三品盛は、固豆腐、もずく酢、蟹カマ
サーモンと、
牛肉とブロッコリーの炒め物
〆は、焼きそば
参考文献
明治30年ごろの生野は、戸数36戸に対し田畑はわずか17ヘクタールの貧しい村だった。
冬になると雪に埋もれ、家の閉じこもる毎日が続く貧しい村だった。
28歳の頃、五左衛門は村会議員に、五左衛門が常に考えていたこと、それは
「なんとかふるさと生野の暮らしをよくできないものか」ということだった。
この当時、新聞や書籍などの活字文化が広がり眼鏡の需要が高まりつつあった。
今後眼鏡が欠かせない必需品になるだろうと感じていた五左衛門は、
明治38年、東京や大阪で行われていた眼鏡枠つくりに目をつけ、
五左衛門は村に工場を建て、大坂から職人を招き、村民特に次男三男に眼鏡づくりを学ばせる。
また「仕事は人である、人を作るには教育」という信念のもと、
工場の二階には夜間学校を開き、人材を育成した。