Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

天国と地獄を観ました

 

昨年の暮れに、NHKのプレミアムなんちゃらという番組枠で「天国と地獄」をやっていました。

私はオペラというものを、食わず嫌いで観たことがありませんでした。

ですから自分で録画した覚えさらさらないんですが、何故か録画されてましたの。

うちのビデオは持ち主と同じく変わり者で役立たずで、

予約した覚えもないものを録画してたり、

予約録画して楽しみにしていると、途中で切れていたりします。

予約した覚えもない、というは「プレミアム」というのを全部拾って録画予約する設定にしてあったらしい。

 

まあいいか、と深夜眠れないのをいいことに、ひとりで観てみました。

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オモシロイ!

天国と地獄、面白いじゃないですか。

天国と地獄といえば、あのラストのカンカンくらいは知っています。

けど、全部のストーリーなんか知らなかったし、あんないい加減で、ぶっ飛んでて、

エッチな話だとは思わなかった。←エッチだなんて、死語かしら。

 

あらすじをざっくり言うと、

人間界のオルフェ ( 音楽家 ) とその妻-ウーリディスは倦怠期。

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二人には浮気相手がいます。

オルフェは妻の浮気相手が毒蛇に噛まれるよう罠を仕掛けるんだけど、

死んじまったのは浮気相手ではなく、妻 ( ウリディス ) でした。

 

ウリディスの恋人は実は、地獄の大王プリュトンでして、

プリュトンはこれで晴れて彼女と二人地獄で暮らせると大喜び。

オルフェの方も妻がいなくなって清々してます。

 

しかし、「世論」はオルフェに対し、妻を取り戻すべきだと主張。

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オルフェは渋々、世論と一緒に神々の世界に旅立ち、

神々の王ジュピテルに 嫌々ながら妻を返して欲しいとたのみます。

それを聞いた神々とオルフェは地獄に行きます。

 

 

地獄にいたウリディス ( 妻 ) は、退屈してます。

地獄の大王プリュトンが、神々の王ジュピテルに彼女を取られないように、軟禁してたから。

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神々の王ジュピテルは女好きで、ウリディスが美人だと聞いていましたから、

地獄に着いた途端に、愛の神キュピドンに命じて自分の姿を蠅に変させ、

鍵穴からウーリディスの部屋に侵入します。

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退屈したウリディスは蠅だろうが構わないでジュピテルといちゃつきます。

ウリディスとジュピテルは地獄から神々の世界に脱出しようとしてプリュドンに見つかって、

三角関係で修羅場で大さわぎになる。

そこへオルフェが加わって、三角関係が四角関係になる。

 

 

結局ジュピテルは ( 神々の王らしく )  オルフェに「現世にたどり着くまで、後ろにいるウリディスを振り返らないなら戻してやる」と約束。

 

ところが妻を愛してはいないオルフェは振り返ろうともしない。

しびれを切らしたジュピテルはオルフェの後ろに雷を落とし、

無理くりオルフェを振り向かせ、ウリディスは再び神々の世界に戻される。

それが誰にとっても ( 現世でも天国でも地獄でも ) 一番いい結果だということで、

最後はカンカン踊りするみたいな話でした。

 

 

神々の話ですもの

冒頭にエッチな話、といいましたが考えてみれば、ギリシャ神話に出て来る神々って全員 色魔です。

人間界で災いが怒るのも、天の神々の愛のもつれの嫉妬が原因だもの。

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嫉妬に狂うジュノン

 

神様なんて神々しいものだと思ったらとんでもない。

下世話で、色狂いで、嫉妬深くて、というのがギリシャ神話の神々でした。

その話なんだから、天国と地獄もしっちゃかめっちゃかで当然。

 

私がオペラ嫌いだったワケ

それをそのまま活かしてやってるから、この作品は面白かった。

日本だったら、《神様だから》と、なんか堂々と正面向いて偉そうにしてて、

アリアを歌ってるみたいな感じ。

私がオペラ嫌いになったのは、そういう日本のオペラしか知らないからだったんでしょう。

 

主役のキャスリーン・リーウェックがいい!

で。

面白かったのはヒロインのウリディスの配役でした。

皆がとり合うほどの美人なんだから、さぞかしスタイル抜群の美女と思うのが間違い。

豊満な体をブリブリ言わせて、男たちを手玉にとる。

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ピンクのスリッパ履いて、お尻まるだしで、とにかく凄いポーズをする。

いやぁ、よくNHKで放送したと思うほど。

豊満な体で、文字通り体当たりの演技。

勿論 歌も滅茶苦茶うまいのよ!

 

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ところが、ちっとも生々しくない。

逆に普通の体形の女性だったら、生っぽくて観てられないかも。

で,ね、観ている内に、不思議なんですけど、「この人美しい」と思ってきますの。

男たちみんなが魅かれるのがわかる。

日本は、美人=スレンダーという幼い美意識だけど、ホントの美人はこういう人なんだと思いました。

 

更に凄かった人がいる! 

私が一番感動したのは、ジョン・ステュクス役のマックス・ホップさんです。

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この泣いているシーンは、恐らく原作ではないと思います。

ステュクスは地獄の大王プリュトンの召使で、ウリディスが軟禁されている地獄の部屋の番をするみたいな役まわりです。

一曲だけ、「私がボイオーティアの王だった時」という歌を歌う端役のはずなんですが、

今回のバリー・コスキーさんの演出では凄く大きい要の役になっています。

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最初から登場して、全員のセリフをマックス・ホップさんが全部やるんです。

ドアの音とか擬音も全部。

登場人物は、マックス・ホップさんのセリフに合わせて口を大きく開け閉めするだけ。

だから、みんなの表情が大きいの。

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歌は勿論本人たちが歌いますよ。

でもセリフ担当は、マックス・ホップさん演じるステュクス。

 

すると、どういうことが起こるかっていうと、、、、ステュクス役が変わるんです

今回の演出でステュクスは、

ウリディスがオルフェといる所にも、

ウリディスが大王プリュトンと浮気をしている所にも、

神々の王ジュピテルが蠅の姿でウリディスとセッ〇スしてる所にも、

彼女の背後に必ずステュクスがいます。

 

ステュクスはウリディスのそばにずっといて、

誰よりもウリディスのことが好きになっちゃってた。

そんなステュクスが歌う「私がボイオーティアの王だった時」は、

ウリディスに対する、恋の告白なんです。

ウリディスはステュクスなんてフンと目もかけない。

で、泣きながらステュクスは歌うんです。

 

凄い演出だと思いました。

深い話にしているなぁと、感動しました。

 

この記事をまとめる時に、ネットでザルツブルグで実際にご覧になった方の記事を読みましたら、

劇場で一部ブーイングが起こったとか、、、、

バリー・コスキーさんの演出は、オーストリアでも前衛的なものだったのかも知れません。

 

しかし、こういうのなら私は観たい。

放送してくれたNHKに感謝します。

勝手に録画してくれた我が家のビデオにも感謝です。

 

性描写なんてもう、凄くモロだったりしてエッチなシーンもありましたが、

それが下品でなく、コミカルに感じましたし、

オッフェンバックが描きたかった地獄のオルフェって、実はこういうことなんじゃないかと思いました。

 

・・・と、こんな話をイマゴロしても、もう観られませんよね。m(__)m

だからといって「天国と地獄ってどんなだろう」と、YouTubeで、日本の〇期会とかのは観ないで欲しい。

それだったら「フランス」「フレンチカンカン」と検索して外人のカンカンを見てください。興奮します、楽しくて。

 

日本のオペラ、こんなにディスっていいのか?

でも。

とにかく。

それだと別ものなんですから、ひとつまあ、個人の見解ということで許してほしい。

 

 

 

参考文献:

max hopp actor

 

kathryn lewek

 

martin winkler