今日は、最新作『ビブリア古書堂』に出てきた鎌倉文庫に関連して話を始めます。
私が鎌倉好きなのには色々わけがありますがそのひとつには、
好きな作家が鎌倉にこぞってお住まいだったということも関係しています。
《作家》より《文士》という方がお似合いの面々
里見弴、大佛次郎、久米正雄、川端康成、高見順、小林秀雄、中山義秀、蒲原有明、小島政二郎、永井龍男、林房雄、吉屋信子、そして島木健作。
好きな作家の殆どが鎌倉在住だと知ったのは、その人たちの作品を読んだ後のことでして、
私の好きな作風は、鎌倉の風土が育んだのかしらと思ったりもします。
【島木健作について】
島木健作は、たまたま手にとった百花文庫を読んだのがキッカケで好きになりました。
百花文庫で島木健作『土地』を読む - Garadanikki
彼は、農民運動に加わり投獄された転向作家 ( 転向文学(テンコウブンガク)とは? ) で、
投獄体験をもとに書かれた『癩』を始め、『赤蛙』などが有名です。
転向後は、服役中に発症した肺結核をかかえながらの作家生活でしたが、
鎌倉文庫が設立した年の秋、41歳で亡くなりました。
敗戦2日後のことでした。
1945年8月17日没、享年41歳。
臨終の席には、川端康成・小林秀雄・高見順・久米正雄がいました。
ご遺体は ( 雪の下の病院から、扇ヶ谷の自宅まで ) 防空演習に使う担架に横たえられて、
小林、高見、中山、久米らの手で運ばれました。川端康成は提灯を持って先導。
自宅での葬儀のあと、貸本屋「鎌倉文庫」で告別式が行われました。
「鎌倉文庫」設立時、病床にあった島木は他のメンバーのように店番をしたりは出来ませんでしたが、
ペンクラブとしての関りは持っていました。
彼が残した『扇谷日記』の5月2日にはこう記されています。
五月二日 水
朝から夕方まで雨であつた。
「鎌倉文庫」 ( ペンクラブの貸本屋 ) へ出す本を物色し、選択した。六十冊を得た。あまりひどい本は入つてはをらぬ筈である。単に自分に不用だといふだけでなんでも出すといふことはしなかつた。主として産業戦士など、青年がよむことを考へて選ばねばならない。さうかといつて自分に必要なものは出せぬし、六十冊えらぶにも一日かかり、疲れてしまつた。
上は愛蔵書。
所々 薄い赤線が引いてあるが、これは前の所有者の所為。
本に書き込みや線を引くのは大嫌いだが、なかなか手に入らない本なので我慢しています。
【鎌倉文庫について】
鎌倉文庫は、文士たちが提供した蔵書を貸本にする商売としてスタートしました。
貸出にあたって保証金と貸本料を払い、
保証金は貸本と一緒に渡される《読書券》と交換に返金される仕組みにしました。
一冊ごとに供出者の名が記されたカードが貼り付けられるとともに「鎌倉文庫之印」が押されてあったそうです。
当時、活字に飢えていた人々により鎌倉文庫は大繁盛。
だが思わぬ事態が、貸本が返ってこない「不環本」の数が増えていったのです。
顧客の中には保証金の没収を承知で本を返さず、そのまま購入したようなつもりで私物化する者もいて、文庫の経営を脅かすようになりました。
姿を消した1000冊あまりの貸本
こうして営業中に不環本となったものと、鎌倉文庫閉店後に買い取られたものとを合わせて、
1000冊あまりの貴重な本が行方不明になってしまいました。
最新作『ビブリア古書堂の事件手帖 Ⅳ ~扉子たちと継がれる道~』には、その、
姿を消した貸本の謎がテーマになっていました。
扉子さんの話
第一話は、高校生の扉子が紛失した貸本に興味を抱き、親友の大伯父を糾弾するという話でした。
親友の戸山圭は、扉子同様 古書店経営者の娘。
圭は扉子に、伯父の利平が大量に「鎌倉書房」の本を所有していた話をする。
話を聞いた扉子は、圭と一緒に利平を訪ねる。
利平がどのように大量の貸本を入手したかを推察するうちに、
扉子はその一冊、夏目漱石の初版本『鶉籠』について疑惑を抱く。
『鶉籠』に読書券が挟まっていたことから扉子は、圭に内緒で利平を再訪。
扉子は利平に対して、『鶉籠』は、鎌倉文庫が閉店したのちに誰かが買い取った物を譲り受けたのではなく、鎌倉文庫から借りた本を返さないで着服したでしょう? と追い詰める。
利平を糾弾する扉子の口調は、年配者に対する礼を著しく逸したものだった。
紛失した貸本の謎を、自分なら突き止められるというおごりに満ちた口調だった。
これが元で、圭は扉子に絶交を言い渡します。
最新作『ビブリア古書堂~』は、鎌倉文庫のこともよくわかるように書かれていました。
さらにビブリアの三世代の女性たち ( 智恵子・栞子・扉子 ) の性格の違いもよくわかる内容でした。
《本に対する愛情、膨大な知識、深い洞察力を持つ》という点では彼女たちは良く似ていますが、年若い扉子が自己の洞察力に酔うあまり、相手をコテンパンにやり込めてしまうところが印象的でした。
そんな扉子の若さゆえの正義感と残酷さを、栞子が心配するという流れもよく書かれていました。
最新作『ビブリア~Ⅳ』は、こうした三世代の性格の描き分けも見事で、
「鎌倉文庫」のことを知る上でも資料的価値の高い一冊となりました。
本日の昼ごはん
金ちゃんラーメン
本日の夜ごはん
昨日大量に作ったなにやらが、、、ならぶ
カリフローレとベルガヴルスト ( 伊藤ハム ) の炒め物
ベルガヴルストの塩味で十分なので味付けは一切必要なし。
キュウリ、なす、みょうがの夏の三兄弟は、我が家の出汁+白だしで。
〆るか? カップスター
ちょっと食べすぎだーねー
デザートまで (;^ω^)