Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

クリス・ハマー著『渇きの地』

 

クリス・ハマー著『渇きの地』を読了

 

図書館の、司書さんが紹介する《ミステリー小説コーナー》にこの本があった。

早川ミステリーの本は、天から小口にかけて黄色に着色されている。

これにグッと惹きつけられる。

内容もわからず、読んでみようと決めたのだが、

オーストラリアのジャーナリストが書いた小説らしい。

 

オーストラリア内陸の町リバーセンドの教会で、牧師が銃を乱射し五人を殺害する事件が起きた。一年後、町へ取材に訪れた新聞記者マーティンは、住民が牧師を庇う証言をすることに気づく。だが、町外れに住む男だけは、住民の言葉を信用するなと警告するのだった。そんな中、山火事が町を襲い、火災現場からかつて行方不明になっていた観光客の他殺死体が発見される。この事件にも牧師が関わっていたのか⸻?

牧師の過去と、彼が事件を起こした真の理由とは。

英国推理作家協会最優秀新人賞受賞作。

HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS No.1995 裏表紙 解説より

 

プロローグには ( 牧師が5人を射殺する ) 事件の様子が書かれている。

これを読んで「失敗したかな?」と思った。

いきなり登場人物の名前が10数人出てくるからだ。

覚えられない。

2回読んだが、混乱するので先に進む。

 

ところが、第一章に入ると、

頭に入りやすい描写でたちまち物語にのめり込んでいった。

面白い!

 

本編は、事件から1年後に主人公の新聞記者マーティンが、リバーセントの町にやってくるところから始まる。マーティンはこの町で起こった射殺事件のその後をルポするためにやってきたのだ。

 

リバーセンドという町はオーストラリアの内陸にあり、干ばつのために干からびている。

カンカン照りの町を歩き回るマーティン。

町の中心にあったホテルは廃業していて、閑散としている。

地元の人をつかまえて、どこから泊まれるところはないかと聞くと、少し離れた所に一軒モーテルがあるという。マーティンは負け犬という名のモーテルにチェックインする。冷房は効かない、シャワーの水も弱い、女主人も感じが悪い宿だった。

そんなくだりを読んでいる内に、私はマーティンと同じ気持ちになって町をさまよっていた。

 

既成の場所に住んでいる主人公ではなく、外から初めてやってくる人間が描写する形で物語が進むから、読んでいる私も主人公と同じ目線で町を辿ることになる。それによってとてもわかりやすく町の様子が頭に入ってくる。

巧い作り方だなと感心した。

 

マーティンは、事件の目撃者や、牧師とかなり深い関係の人に出会っていく。

彼らは牧師が5人も人を殺したというのに、彼を悪くはいわない。

「何故、あんな良い人がいきなり銃を乱射したのかわからない」と首をひねる。

牧師は駆けつけた警官にその場で射殺されているので、動機は今もってわからない。

牧師を射殺した警官は牧師の友人だった。

「五人も射殺しているので、取り押さえようとしたが、自分にも銃を向けたのでやむなく射殺した」と警官は語る。

だが彼もまた「なんであいつが・・・」としょげている。

 

マーティンはひとりひとり丁寧に、事件の話と今の気持ちを聞いて回る。

いわゆる現場周りをして地道に記事を書くタイプの記者のようだ。

 

話が進むうち、マーティンの過去がわかってくる。

中東のガザ地区で取材活動を行っていたときテロリズムに脅かされ、3日間車のトランクに詰め込まれるという体験をした。そのことで彼はPTSDを発症。それまでは冷静な傍観者に徹していられたジャーナリストだった彼が、初めて事件の当事者になりかけた。

そんな彼のリハビリを兼ねた取材旅行が、今回のリバーセンドだった。

 

 

興味深かったこと

物語には、2人の対照的な記者が出てくる。

ひとりはマーティン。

彼はテロの恐怖を体験してから取材対象との距離の取り方に疑問を感じている。

もう一人はマーティンのライバルでダーシー・デフォーという記者。

彼は主観をさしはさまない取材者であることに徹した冷静な記者だ。

 

物語の中盤で、マーティンが更迭され、彼の代わりにダーシー・デフォーが現場にやってくるのだが、マーティンはこんな風にライバルを見ている。

彼は燃えさかる<コマーシャル・ホテル>の前にたたずむダーシー・デフォーの姿を見た。そのときのデフォーは、炎の前で身じろぎもせず、一心不乱にメモを取り、火炎の様子を克明に記録して、人々の反応を観察し、現実に無感覚で、命からがら火炎地獄から助け出されたロビー・ハウス=ジョーンズを見ても瞬きひとつしなかった。

マーティンはそこに見たのは、かつて自分自身の姿だった。

ガザ以前の彼も、まさしく同じように、目の前の出来事に超然としていたのだ。マックス・フラーの秘蔵っ子として世界を股にかけ、記事に自分自身のことはいっさい投影せず、取材が終わったら自らの痕跡を残さなかった。ニュースになる出来事はどれも他人事である、彼はただ、ありのままを伝える観察者だったのだ。

しかしガザを境に、すべてが変わった。

   ~中略~

マーティンは当事者になった。もはや他人事ではなかった。過去に取材した人々の悲しみ、喜び、むなしさといった感情が少しずつ本来の彼を突き崩し、いつしか気づかないうちに他人の痛みがわかるようになっていたのだ。

p.504

 

マーティンは地元の住民とどっぷり向き合うことにより事件の真相を解明する。

もし彼が、昔の彼 ( ライバルのデフォーのような ) だったら、今回の事件を解決することは出来なかっただろうと、このシーンを読み返して思った。

 

冷静に客観視して原稿を書く記者と、現場にどっぷりつかって原稿を書く記者。

ジャーナリストとして、どちらが正しいということではないのだろう。

作者は、自身がジャーナリストという立場からこのテーマに挑んだのではないかと思う。

だから、主人公の言動にリアリティーがある作品なのだろう。

 

 

ミステリー小説の枠を超えた名作!

そういった意味で考えると、この本は単なるミステリーではない。

オーストラリアの内陸の町の、閉塞した住民たちのドラマであると同時に、

ジャーナリストとは何かも描いた作品だ。

 

本作は、英国推理作家協会賞最優秀新人賞を受賞し、オーストラリアで高い評価を受け、第二作、三作も書かれているらしい。

日本ではまだこの本しか刊行されていないが、マーティンが次にどんな事件に巻き込まれるのか、読める日を楽しみにしている。

 

 

こちらにテレビドラマになったものの予告動画が紹介されています。

www.smh.com.au

 

 

長編の物語をストレスなく読めたのは、作者の力でもあるが、翻訳者の力量でもある。

翻訳者-山中朝晶さんの人となりがわかる資料があったので貼り付けておく。

海外小説の楽しさを届けたい---山中朝晶⤵

https://www.city.kitahiroshima.hokkaido.jp/hotnews/files/00133200/00133222/20190701_06.pdf

bookmeter.com

 

 

 

本日の昼ごはん

前回、そうめんに焼いたズッキーニを乗せたら美味しかったので、再び💛

ズッキーニは焼くと甘くなるので、色々な料理に使えそうです

 

 

本日の夜ごはん

今日も赤ワインを峰子飲み(;^_^A

 

新しいマヨネーズ、美味しいのでレタスをザクザク切ってきた!

 

 

イカと野菜の中華風炒め

にんじん、ピーマン、しめじ、ナス、イカをニンニクと共に炒めて、中華風餡でとじました。

 

焼きしいたけの出汁醤油あえ

ひとパックのしいたけを焼くとこんなに少ない。

焼いたしいたけを、我が家の出汁に醤油を少し入れたボウルに漬けて割いただけ。

これが旨味があってとてもとても美味しい!

 

鶏のつみれ、ズッキーニ、春雨、しめじ、トマトのスープ

三品盛の左・・・なんだったかなあ💦

 

バーボンのつまみに、カルディの新商品