これといった予定も仕事もないので、オハラショースケさんを決め込んだ。
温めの風呂で半身浴をしながら、この本をまるまる一冊読了。
あらすじ
高校二年生になって間もなく、学校に行けなくなった
物語には三人の訳あり男が登場します。
シベリア帰り大叔父・兼定
謎の流浪人・岡田
引きこもりの高校生・薫
緊張していると、呼吸するたびに空気を吞み込んでしまうという薫の苦しく切実な日々を中心に、
兼定と岡田の二人の話が淡々とつむがれていきます。
兼定
学校に行けなくなった薫がたよったのは、冠婚葬祭でしか会うことのない大叔父・兼定だった。
兼定は、実家から閉め出された男だった。
敗戦後シベリアに抑留され、共産主義の思想をたたき込まれ、帰国して諜報活動に関わった罪をとわれたことが原因だった。
兼定が帰国した時には両親は既になく、長兄が家を継いでいたのだが、真面目で厳格な長兄や長姉らから「アカ」と毛嫌いされ家を出ることになった。
兼定が移り住んだのは、東京から七百キロ離れた海辺の町・砂里浜だった。
砂里浜に辿り着き、安いアパートを見つけ、保険会社の営業所に履歴書を出すと、あっけなく採用された。営業経験があること、活舌のよさ、如才ない人柄はすぐに所長の気に入ったようだった。半年後には所内で一、二を争う成約数をあげるようになった。
砂里浜での生活が安定すると、東京とはみるみる疎遠になった。
兼定は貯まった金でアパートと中古のカウンターバーを居ぬきで購入した。
「オーブフ」とい名づけた店で、兼定はジャズ喫茶を始めた。
愛想をふりまかず、不機嫌にもならず、淡々とふるまっていれば、客も気楽でいられる。カウンターの内側の人間の気配を気にすることなく、音楽を黙って聴きながら、それぞれ別々のことを考えていられる。ジャズ喫茶はそのような無為の時間をただぼんやりと室内に漂わせていればいい⸺兼定はそう考えるようになった。
口数の少ない兼定を親族は見たことがないはずだ。自分が無口でいられる場所を兼定は好んだ。
岡田
そんな「オーブフ」に、岡田はふらりとやってきた。
ヒッピーでもしていたのか、素性もわからぬ岡田を、兼定は拾い上げ店を手伝わせるようになった。
以来、店のまわし方ががらりと変わった。
コーヒーも料理も岡田が出すもののほうがはるかにうまい。
にわかに肩の荷が下りた兼定は、なかば隠居同然の気持になった。
薫
そんな兼定と岡田の生活に、東京からやってきた薫が加わった。
薫は兼定の長兄の孫で、人みしりで引きこもりの高校生だった。
夏のあいだ、東京から遠く離れた海辺の町で、兼定を頼りに暮らしてみたいと言い出したのは薫だった。
できるだけ遠くへ行きたいという気持ちと、はぐれ者のような大叔父への関心、兼定がやっているジャズ喫茶への興味もあった。そして大叔父はたぶん、自分をかまわず放っておいてくれるだろう。
砂里浜で暮らし始めた薫は、店を手伝わなければという気持ちはあるものの、客商売になかなかなじめずにいた。
そんな薫に手をさしのべたのは岡田だった。
注文を聞き取れない薫をさらりとフォローする岡田。
薫は、呑気症というやっかいな病気を抱えていた。
人と会話をした時に、空気が腹にどんどんたまっていき腹部膨満になってしまうのだ。
「そんなときには、我慢せずにおならしたらいい」
岡田の軽口に、薫の心がほどけていった。
夏休みが終わりに近づくと、薫は以前より表情がやわらかくなり、陽にも焼け、客への対応もできるようになった。
そうして少し快活になって薫は東京に帰ることになった。
物語は、これといった事件も起こらず淡々と三人の男の生活が描かれています。
タイトルの「泡」は、呑気症の薫のおなかの中の空気であり、砂浜にたつ海の泡でもあるのでしょう。
そしてもうひとつ、彼らが抱くはかない感情の象徴でもあるように感じました。
本日の昼ごはん
釜玉うどん
茹で上がったうどんには手早く卵を混ぜる。
揚げ玉、干し海老、海苔など乗せ、出汁醤油を回しかけたら完成。
最近は麻辣スパイスがお気に入り。
本日の夜ごはん
簡単、というより雑な献立・・・。
焼き鳥と、春雨豆腐スープ。
リクエストのあったニラ玉は、美味しいと言われホッとしました。