先日読んだ永井路子著「美貌の女帝」関連書物として、二冊読了。
三枝和子著「女帝・氷高皇女」は、永井路子さんと同じく氷高が主役、
豊田有恒著「長屋王横死事件」は、大判子虫が主人公になっている。
子虫は長屋王の家来で実在の人物である。
忠臣蔵の奈良時代版のごとく兵庫寮で刃傷事件を起こしている。
彼は、長屋王を自殺に追い込んだ人物を探すため晩年を費やし、
「聖武天皇の皇太子を呪詛により殺したのは長屋王である」と密告して出世した中臣東人を、主君の敵として切り殺している。
当時この事件は、長屋王は藤原氏の権力争いの為に謀反の疑いをかけられた無実の人と当初から噂されていて、藤原四兄弟が相次いで疫病で死んだのは《長屋王の祟り》と言われた。
長屋王の横死は史実なので三冊ともに記されているが、誰が真犯人かは本によって異なる。
また、長屋王と氷高女帝との関係性も、
永井さんの本では「氷高が好きだったのは長屋王」という線で書かれているのに対し、三枝さんの本では「氷高が好きだったのは舎人皇子」になっていて長屋王との関係は薄く、豊田さんの本では、さらに複雑・意味深な関係にしている。
その他、氷高の人間関係も相違がある。
永井さんの氷高は「藤原氏を忌み嫌い、天皇の后は曽我氏の血族が継ぐべきという信念の元に人生を送った」としているのに対し、
三枝さん氷高はそれほど藤原を嫌っておらず、むしろ祖母・持統天皇の政治の駒にされたことを苦しんだ悲劇の女帝として描かれている。
一方、豊田さんは主人公が氷高でないので、客観的に俯瞰で描いている。
豊田さんの本は「長屋王 横死事件」というタイトルでもあるように、氷高中心の話ではない。
主人公の子虫が横領の罪で陸奥 ( 僻地 ) に流される時代の話などにも頁が割かれていて、当時の身分制度、領土問題、和人・漢人・蝦夷の差別問題にまで触れているのが面白い。
因みに、豊田さんは昭和四十七年に高松塚壁画古墳が発掘されたことにも関与された方だ。
※ 高松塚の被葬者に《高市の皇子説》を打ち出した人として有名。
実際この本でも、主人公 子虫が、長屋王の父・高市皇子の殺害現場や、墓の壁画の作成にも立ち会った人物として書かれている。
今回、三冊の氷高関連の本を読んだが、読んだ順番も良かった。
この時代の人物名は、諱 ( いみな ) があり、称号があり、天皇になれば名前が変わるから複数きまわりない。
それを三冊読んだことにより、人物像や相関図が頭に入って助かった。
中でも豊田さん本は骨太で、当時の様子も詳細にわかり大変参考になった本だった。
本日の昼ごはん
冷やし中華
錦糸卵、ハム、きゅうりの他に、上にトッピングしているのはシーアスパラ
本日の夜ごはん
三品盛りは、栗の唐揚げ、明太子パスタ ( 既製品 )、鶏の唐揚げ
魚力で買ってきた塩辛と、日南で買った豚肩ロースで作った叉焼。
カリフラワーも練馬の八百屋さんで買ったもの。
本日の美味しいものは全部、練馬のお蔭の品でした。