木皿泉 著『さざなみのよる』を読了
染み入りました、熱い涙にぬれました
この本を知るキッカケをくださったのは、つるひめさんです。
映画、本、音楽に対して鋭い審美眼を持つ つるひめさんは、
いつも面白そうな作品を沢山 紹介してくださいます。
つるひめさんは、私とゼネレーションが同じなようで、観たもの経験してきたものに、
共通項を覚えてしまいます。
そんなつるひめさんが取り上げられたのが、大好きな木皿泉さんこと。
ドラマはともかく小説は未読だったので、すぐ借りてきました。
一気読みでした
いや~ なんと巧いのだろう。
脚本家としての木皿泉さんは『やっぱり猫が好き』から輝いていましたし、
代表作の『すいか』は、私にとっては永久保存版的作品です。
しかし、優れた脚本家がかならずしも優れた小説家とは限らない、そうたかをくくっていました。
たがしかし、間違っていました。覆されました。
木皿泉さんは、優れた脚本家でもあり また優れた小説家だったのです。
「さざなみのよる」は小説としてピカイチ 秀逸、圧倒的感動作。
こればかりは、ドラマ化は無理! と思いました。
何故ならこの本には、映像化しにくい人間の想いが溢れていて、
そのエピソードのひとつひとつは《言葉 ( 文字 ) 》でなければ表現できないようなものだから。
それをもし映像化したら、ナレーションばかりになっちゃうんじゃないかな。
小説「さざなみのよる」とドラマ「富士ファミリー」
小説の設定はすでにドラマになっています。
富士山の裾野にある個人経営のコンビニを舞台にして、美人三姉妹の鷹子 ( 薬師丸ひろ子 ) 、ナスミ ( 小泉今日子 ) 、月美 ( ミムラ ) と、同居人の「笑子ばぁちゃん」 ( 片桐はいり ) ほか、豪華キャストが競演する人気ドラマでした。
放送されたのは2016年と2017年の2本で、翌年2018年に出版されたのがこの本です。
ストーリー的には、2本のドラマの真ん中に位置する内容が小説です。
主人公は二女のナスミ。
小説は、ナスミが癌で死んでしまうところから始まります。
彼女の姉、妹、夫、ばぁちゃん、元同級生、その妻、東京の元同僚というふうに、ナスミと関わってきたひとたちが一話づつ語っていく14本の短篇集になっています。
10人が語る ( ※14話は本人の章や、だぶっている章もあるので ) ナスミを全部つなぎ合わせると、ひとりのナスミが出来上がる。
はすっぱで豪快だけれど、繊細で優しい思いやりも持つナスミというキャラクターは、
彼女が死んだ後も、みんなの心に残ります。
「なんだ、私、けっこういい人生だったじゃん」
みんなが思い出すナスミは、なんとも大らかで器が大きくて男前。
いつでもガハハと笑っていた彼女は、こう言って去っていきました。
「なんだ、私、けっこういい人生だったじゃん」
母を失くして思うこと
わたくしごとですが、去年亡くした母とナスミがだぶりました。
私が知っているのは母の一部分で、色々な顔を周りの人に見せていたんだと、葬式で知りました。
死をキッカケに故人が語られます。
その時初めて肉体はなくなっても、魂はみんなの心に宿ることを実感しました。
同じ経験をなさった方なら、小説を通して《命の宿る場所》に涙したことと思います。
そんな感動的な想いを紡いでくれた二人の作家に感謝です。
特に第4話、日出夫の話に笑い、涙しました。
木皿泉さん、素敵な話をありがとうございます。
残念なことがひとつ・・・でも
時系列上、仕方がないことですが、本を読んでいて小泉今日子さんがダブりました。
読んでから観る派の私にとって「逆だったらよかったのに」と残念ですが仕方ない。
でも幸いなことに『昨夜のカレー 明日のパン』まだ観ていないので、そちらの方は、
是非、小説→ドラマの順で愉しもうと思います。
以下は、各話の覚え書。
ネタバレにならないようにしました。読まれた方なら、わかるかも。。
最初の章、ナスミは、試し読みも出来るようなので、好きな部分を書きました。
ナスミ自身
日出夫の弁当箱はナスミが買ったもので、食べ終わった後、かさばらないように折り畳み式になっている。日出夫は、中身をきれいに食べ終わると、それをパタンパタンと気持ちのいい音を立ててぺしゃんこにした。ナスミは、それを見るのが好きだった。まだ自分が元気だったころ、仕事の後、飲んだビールの缶をぺしゃんとつぶしたり、店の裏で空になった段ボールを要領よくつぶしていたことを思い出す。姉の鷹子が、パキンと割って半分くれた煎餅を、何の脈略もなく思い出す。日出夫の弁当を片づけるしぐさを見ていると、宿題を終えて、早く友だちと遊びにゆきたくて、鉛筆やら消しゴムを大急ぎで筆箱にしまう小学生のようで、ナスミの顔が自然とゆるむ。
毎日の同じしぐさにこれほど心が慰められるとは、思いもしなかった。日出夫が弁当箱をたたむ。それだけのことに、ありがとうと思う。
2 姉の鷹子…姉らしい。この時間だけは、ナスミのためだけに使おう。
3 妹の月美…それ唱えてみな、楽になるから おんばざらだるまきりくそわか
4 夫の日出夫…人を文字にたとえるナスミ。自分は「が」なら、日出夫は「キ」だね。
5 父の叔母、笑子ばあちゃん…ダイヤモンドの話。
6 同級生の清二…かけおちの話。
7 佐山啓太…殺されたかもしれない。
8 会社の元後輩 加藤由香里…ナスミが頼んだこと。
9 清二の妻、利恵…ふたつの家出。
10 愛子…ナスミとの因縁。笑うことを教えてもらった。
11 日出夫と鷹子…じゅうおうのプレゼント
12 同僚の好江…ナスミの歯と男と仕事
13 光…やどった命
14 光…ダイヤモンドふたたび
下記で試し読みが出来ます⤵
本日の夜ごはん
トマトとアボカドの組み合わせはバッチリです。今日は紫蘇入り。
ロマネスコ、一度食べたらその美味しさに魅了されました。
どでかシュウマイ
シュウマイは、何もちまちましている必要もないような気がする。
これは蒸すより、焼くのがいいです。
信州のかりんとうまんじゅう
甘めのあんこに焦がし味のかりんとうが絶妙。