Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

大田十折さんの作品を尋ねて

 

「草葉の陰で見つけたもの」を読了。

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この本は、よんばばさんが紹介されていて興味をもったものでした。

「草葉の陰で見つけたもの」「電子、呼ぶ声」の2作の短編が収録されていて、

表題の「草葉の~」で作者は「第一回小説宝石 新人賞」を受賞しています。

 

表題の方は戦国時代の話で、信長に首をはねられてさらし首になった男の、生首と少女の物語。

「電子~」の方は未来の話で、お手伝いAIロボットと少女の物語です。

生首は意思はあるけれど体がない。ロボットは意思と体はあるが感情がない。

そんな二つの特殊な存在と少女のやりとりが実に面白く、思いもかけぬ展開でワクワクしました。

大田十折さんが描く独特な世界感と登場人物の感情描写に、一発でやられました。

20歳の新人作家が凄いものを発表したと驚きました。

 

 

ところが。

次回作が出ないんです。

処女作が刊行されてから13年、次の本が刊行されないことに対して、

よんばばさん同様、私も勿体ない思いを感じていました。

 

 

著者は筆を折ってしまったのか・・・

いいなと思う作家さんがなかなか新刊を出さないという状況から、考えさせられたことがありました。

物書きでもない私の、勝手な与太話です。

 

以下がその与太話

職業作家という商売は本当に辛いものだと思う。

作家に限らず、一から物を作り上げる職業人の苦労は並大抵のものではないと思う。

画家も、漫画家も、作曲家も、脚本家も。。。。

 

「書きたいことが溢れてきて溢れてきて、書く作業が追いつかない」

「書きたいことを今のスピードで書いていたら、寿命が足りない」

だなんて言っていた御大もいるけれど、そういうのはごく稀で、

多くの作家は、産みの苦しみに悶絶する日々を送っているハズだ。

 

そんな作家を支えるのが編集者だ。

作品が世に出る前の、最初の読者が編集者であるのだから、

作家は、雑談であれ、ヒントでも、感想でも、助言でも、賞賛でも、編集者に求めるだろう。

 

 

処女作は、勢いや思いつきで作れたとして、

そこから先、売れるものを書き続けていくことは1人では出来ないと思う。

才能ある作家の個性を伸ばすも殺すも、優れた編集者の腕にかかっていると思う。

 

・・・・。 

そんなことをつらつら考えていたら、ある本の編集者を思い出した。

乙川優三郎著『この地上において私たちを満足させるもの』に登場する早苗という人物だ。

 

 

主人公は放浪の旅で得た経験や思いを元に物を書く仕事につく。

書きたいことは余りある、が、ただ書くだけではなく自分らしい文体を求めるために、彼は命を削っている。そんな彼が一緒に暮らすようになったのが、早苗という女性編集者だった。

敏腕編集者の早苗は、会社で座る暇もないほど立ち働き、家では夫が書いた数枚の原稿を丁寧に読み、ダメだしをして出かける、という生活を送る。

 

「今は高橋光洋の文体を作るときよ、ほかのことはどうでもいいわ」

早苗はつねに叱咤激励する。

「どん底はまだ先よ、そこから這い上がるから大丈夫、うなだれないで」

 

この本で私は「優れた編集者とは、こんな風に作家に寄り添い、意見をするものだ」と知った。

早苗の場合は、編集者であると同時に内縁の妻でもあるが、

やはり編集者と作家とは、こういう関係なのだと感心した。

 

 

しかし。

昨今は紙の本が売れず、出版社もバタバタとつぶれている。

編集者と作家が、厚い信頼関係で結ばれ、長い付き合いであるというのは、

昔のことなのかも知れない。 

 

 

さて。

話を大田十折さんに戻します。

彼の著作がどこかで出ていないか探していたら、

小野哲平さんのブログ「そして彼は書き続ける?」にたどりつきました。

大田さんと小野さんは旧知の仲で、大田十折の三作目が2017年に出ていることを知りました。

 

ameblo.jp

 

小説宝石|雑誌|光文社

2017年10月号

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単行本にはなっていないようなので、バックナンバーを取り寄せました。

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おおおお、大田十折ワールドだ。

年代場所不定、夢かうつつか幻かのおとぎ話のような物語です。

個人的意見ですが、先の二作に比べて「ちょっと温いかな」と思いました。

がしかし。

それでも「大田さんの発想力は衰えていない」と嬉しくなりました。

 

もしこの作品に第三者の支えなり助言のようなものが、もっともっと反映されていたならば、

更に磨きのかかった作品になったのではないか、と思いました。←失礼<(_ _)>

 

大田さんの描きたいことは、わからないでもない。

でもそれをもっと効果的に生かす何かが足りないという気がしたのです。

 

いずれにせよ私はこう思います。

巧い書き手が、下手になる筈はない。

三作目を期待していた私ですが、更にこう期待します。

四作目が世に出る日が、一日でも早く来ることを。

 

 

 

【印象的なところ】

主人公の少年が、村を繁栄させる女神に逢いたくて森に踏み入ります。

長老から決して行ってはいけないと言われた禁忌を犯して。

そんな少年は、森の奥の泉で、受け止めきれない事実をみることになります。

その時の一文がこれでした。⤵

わからないことばかりで、身の内で処理しきれないものが全部、涙となってあふれ出るようだった。 

少年の切ない気持ちがよく伝わってくる一文だ。

幼い少年の感情がいっぱいいっぱいになってしまったことがよく伝わってきて切なく健気に感じた場面でした。

 

 

 

 

本日の昼ごはん

黒ゴマきのこ牛乳と、ナポリタン

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以前、コウケンテツさんの「大阪の喫茶店のナポリタン」のレシピで作って美味しかったので、今回もそれを元にしてちょっとアレンジしました。

 

コウケンテツさんが「入れない」と言っていたピーマンを投入。

あと、隠し味に味噌を使ってみた。←これ、大成功です。絶対に味噌アリですわ!

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コウケンテツさん、オリジナルはこちら⤵