Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

中山義秀 著『厚物咲』

 

最近続けざまに、中山義秀の本を読んでいます。

キッカケは、島木健作の『扇谷日記』に出て来たことです。

 

島木健作は里見弴が嫌いらしく、中山義秀が里見弴の『金』を褒めたことをいぶかしく感じています。

昨年に作家等が顔を合した時、中山君が里見氏に「金に感心した」といふやうなことをいつていたのが耳にあつたので、「金」もよんでみたが、これは少しも感心できなかつた。

 

かういふ人間の生涯を描くには、作者のうちに神があつて、そこからの光りによつて照らされるのでなければ全然無意味である。

 

作者は一體かういふ生涯のなかに何を見てゐるのだらう。「遺聞」のなかの、常吉にとつて、札は切手やペーパーとおなじだつたのだ、などといふ繪描きの解釈などもなくもがなである。中村の眼を疑つた。 厚物咲 を書いた中山好みのものといふことはわからなくなないが。

島木健作著『扇谷日記』p.41より

関連記事

島木健作の感想を考える - garadanikki

 

 

 

そんなワケで、最初に読んだのが『厚物咲』です。

厚物というのは、菊の種類のこと。

こんな感じのぷっくりした花弁の菊をいうらしい。⤵

f:id:garadanikki:20210705134818j:plain

 

 

《物語はこんな感じ》

この作品には、瀬谷、片野という二人の老人が出てきます。

二人は幼馴染。

 

歳を取り、瀬谷は代書業をコツコツやっている。

片野は果樹園をやっているが、菊作りの大会で受賞するくらいの見事な菊を作る名人。

 

小さい頃の二人は、お互い裕福な家で育ち、学業も優秀だった。

親の反対を押して東京に出て貧乏になった瀬谷は、片野をさそって金鉱堀をする。

ひと山当てようと、山を案内するブローカーを訪ねるが、留守で彼の細君が金山へ先導した。

二人はその細君の美しさに驚く。

片野は女に一目ぼれし、女の口車に乗り権利金とやらを払う。

しかし、そのことを瀬谷に相談もせず抜け駆けしたために、しこりを残す。

結局、権利金の話も嘘で、片野はブローカーと細君に騙されたのだ。

 

 

そんなことがあってから片野はけちになり、

自身の妻が病気でも医者にも見せずろくな食べ物を与えないような男になってしまう。

見かねた瀬谷の妻が看病に通ったが、末期の癌であった彼女はひからびたように死んでいく。

片野の妻の死後、瀬谷は堅く口止めされていたという彼女の秘密を妻から打ち明けられた。

片野の妻のおりんは五百円の金を肌身離さず持っていた。

おりんは自分の死期を覚ると、瀬谷の妻に頼み込んで彼女の甥を密に呼び寄せその金をくれたやった。

片野はその事実はもとより妻がそうした大金を持っていることすら知らなかった。

 

 

一方、瀬谷は片野に30円ばかり借りがあった。

娘の嫁入り費用に借りた金は、毎月3円づつ返すことになっている。

証文もとらずに借りた金の返済が9年続いた頃、瀬谷は30円以上支払っていたことに気づく。

片野にそれを口にするも「へぇ、そうだったかな」と、とぼけられてしまう。

取りたてにくる片野は、4~5時間も新聞を眺めて居座る。

彼は、月々の小遣い欲しさとその習慣を楽しんでいるのだった。

 

 

瀬谷と片野は、菊作りを通しての付き合いもある。

片野は小心で吝嗇な性格のくせに、ふしぎと彼の作る菊は大菊の花弁のがっしりした厚物咲だった。

瀬谷も老後の手すさびかたがた菊作りには眼がなく、片野の菊苗を貰っていた。

彼が9年間 無駄に金を払いつづけた裏には、

なにとぞして片野から良い菊苗を手に入れたいという下心が無意識にあったのかも知れない。

しかし片野がわける菊苗はろくな物のあった試しはない。

 

 

 

片野は妻の死後、つまらぬ女をめとり、その女が出ていった後も、凝りもせず後添えを欲しがった。

現在、執心しているのは、50代の夫に先立たれて30年という寡婦で、

金融業をしているわりに上品な女性であった。

 

瀬谷は彼女から、度重なる片野からの恋文のことをきき、しかるべく注意をして欲しいと頼まれる。

手紙には「結婚してくれなかったら死ぬ」とある。

瀬谷が片野に、女性からの手紙を返すと、片野は激怒する。

 

数日後、片野が木から落ち骨を折り寝付いていると知り、瀬谷は妻を見舞いに行かせる。

噂では、寡婦のところに夜這いしようと木に登って落ちたという。

見舞いの折、片野が何かを隠したと聞き、瀬谷は新作の菊ではないかと感じる。

 

瀬谷は菊見たさに、こっそり片野の家に行き覗きみる。

室内には、立派な白い菊の鉢が倒れていた。

そして片野が首をつって死んでいた。

瀬谷はその菊をもち帰り、大会に出品し高い評価を受ける。

 

片野の自殺を世間では失恋のショックだと噂するが、瀬谷は手紙の文面を思い出す。

結婚できなかったら死ぬと言ったことを、片野は実践したのだと思った。

瀬谷は片野の人生を振り返り、そういう男であったと思った。

そして。

自分の結婚が幸せであったこと、菊は人工ではなく自然な菊がいいものだと悟るのであった。

 

 

遅いスタートの作家

中山義秀は、この作品で第7回芥川賞を受賞しています。

38歳、作家としては遅いスタートでした。

若いのに随分と枯れた話を書くものだなと思いました。

 

文体も派手なところはありません。

とつとつと語っていく感じで、文章に飾りというか煌びやかなところはありません。

では、退屈かというとそうじゃない。

読ませるのです。

中山さんの文章は、とても読みやすい。そして物語にのめりこめる何かわからぬ魅力を持っている。

 

島木さんの日記をひもといて、またひとり素晴らしい作家に出会えました。

 

 

30代後半の男性が書くには枯れていると思う文章の一部がこちらです

60年来の友人といえるだろうかと瀬谷は片野を腹立ち憎みたくなる。巷塵に埋もれつくした瀬谷の身にとっては友の善悪は最早問題ではなかった。ただ老いの身を互いにいたわり合うような心友が欲しい。己の生涯とともに片野との六十年の交友もまた空しかったことを考え、片野のような人間と結び合わされた宿命を瀬谷は二重にいまいまとくなったくるのだった。

中山義秀 著『厚物咲』筑摩現代文学大系55 p.9より   

 

 

 

 

本日のお昼ごはん

「おっはよう」と起きてくると、イソイソと作ってくれる金ちゃんラーメン 

f:id:garadanikki:20210726094727j:plain

 

夜食の餃子の買い出し兼、私の夕食は、、、はしばやん

皿うどんをテイクアウトにしたので、ちゃんぽんを食べます。

f:id:garadanikki:20210726194408j:plain

 

やっぱり、美味しいわ、はしばやんのちゃんぽんは!

f:id:garadanikki:20210726194716j:plain

 

味変で金蝶ソースを入れると尚美味しい!

f:id:garadanikki:20210726194710j:plain

 

 

MOURI の夜食は、はしばやんの眼鏡橋 焼きぎょうざ

f:id:garadanikki:20210726223407j:plain

10個買ってきたんですが、いっきにペロリでした。

私も3つ食べたけど (;^_^A