テレビの録画リストを整理していたら、随分前に録画した「ハムレット」があったので、
遅ればせながらの観劇です。
2016年 蜷川ハムレット
主演 藤原竜也、満島ひかり、横田栄司、平幹二朗、満島真之介、鳳蘭
ほぼほぼおおむね良い出来かと思います。←えらそう m(__)m
がしかし、
個人的には、藤原ハムレットに魅力を感じませんでした。
藤原竜也さんは13年前、21歳の時にも蜷川演出でハムレットを演じています。
その彼を再度 起用する理由がわからないのです。
初演は喉をつぶしハムレットの台詞を大幅にカットして上演せざるを得なかった。
再演の今回はどうかといえば、、、老けた。
33歳という年齢は、舞台俳優としてまだまだハムレットが出来る歳。
若い頃と違った円熟味あふれる解釈でとりくめるだろうと思います。
しかし13年前の、21歳の粗削りだが若き血潮に溢れるハムレットの方が良かったと思います。
今回はどうかというと、例えば、発声に成長がみられない。
全編、怒鳴るような大声だから、緩急をつけようもなく、
「こんな声の出し方をしていたら千秋楽までに 喉がつぶれるんではないか」と心配になるほどでした。
はじめに大声を出すと、更に声を張らなければいけない場面で辛くなるだろうに。
そういった声の緩急というか、コントロールに欠けるのでただただ心配。
シェークスピアの主役の台詞には、目の前の相手にかける台詞と独白とが織り交ぜられています。
この独白がうまく操れると、実に効果的に心の内が表現できる。
しかし彼の独白は声が低くなるだけで、途端にインパクトもなくなり台詞も聞こえづらくなる。
発声法の訓練が出来ていないと大変なことになります。
台詞はキチンと
「台詞はキチンと」というと、古い演劇愛好家の言い草に聞こえるでしょうが、基本は大事です。
今回のNINAGAWAハムレットでも、基礎訓練の薄い若手の役者に比べ、
俳優座出身の平幹二朗さん、文学座出身のたかお鷹さんの口跡の良いこと、本当に素晴らしい。
⤴ 堂々と喋れるとそれだけで王や貴族の風格が現われます。
その点、若い役者の方が不思議と、大仰にやる傾向がある。
大仰に喋ればシェークスピア劇になるワケじゃないのになぁ。
キチンとした発声を学んだ上で、心も体も自在に変化出来るのだと思いますが、
てぶりみぶりで貴族ってこんな感じ?みたいにやられると見ているこっちが恥ずかしくなる。
60年代~70年代のアングラ演劇全盛の頃、
パッションとか、型破りだとか言われた時代があるけれど、
気持がこもっていれば台詞なんてどうでもいい、というのは論外だと私は思います。
《型破り》ってのは、型があって初めて壊せるものでしょうからね。
じゃ、綺麗な声で口先ばかりの演技、そんなのは勿論 論外です。
そういった意味で、好みの問題でもありますけど、
私の中での断トツトップは文学座の江守徹さんのハムレット。
マクベスも良かったですけど。
本場イギリスならやはり、ケネス・ブラナーでしょう。
YouTubeに、江守さんのハムレットの音声があったので聞いてみたら、実に見事、美しい。
YouTubeのは朗読劇ですけれど、実際に観た舞台もセリフと独白とか際立っていて、
ハムレットの苦しい胸の内が伝わる名演技でした。
今回観た、2016年版NINAGAWAハムレットで印象に残ったのは、
レアティーズ役の満島真之介さんと、父親ポローニアス役のたかお鷹さんでした。
2人の演技には品があり、堂々としていました。
真之介レアティーズは凄いです!
特に終盤のフェンシングの迫力に圧倒されました。
今回は、実姉の満島ひかりさんが、妹役のオフィーリアを好演しています。
実際の姉弟が、兄妹役で共演していているのですが、満島姉弟はやはり凄いです!
特別な舞台俳優の基礎を学んでいるかどうかわかりませんが、他を圧倒する実力があります。
満島ひかりのオフィーリアは魅力的で、気の狂ったシーンは圧巻でした。
ただひとつ、歴代のオフィーリアと比べ気になる点は 品格です。
時として貴族の子女に見えないのは、衣装やメークのせいかも知れません。
発狂シーンの衣装やメイクをここまで汚してしまうと、可憐なはずのオフィーリアが、
時折 娼婦のように見えてしまうのが、勿体なく感じました。
つらつらハムレットの話をしていたら、歴代のハムレットが気になってきた。
誰がレアティーズをやったとか、ガートルードは誰だったとか、、、、
でもそれは別の機会に。
とりあえず最後は、ケネス・ブラナーのハムレット
これは近々、必ず観ようと思います。
本日の朝ごはん
本日の夜ごはん