Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

根津の甚八 

 

BIKAを出で、まっすぐ帰ろうか どこかに引っかかろうかと路地を歩いていると、

おやおやと目を引く店がありました。

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「根津の甚八」と書いてある。

もしやこれ、以前テレビでも紹介していた居酒屋かしら。

 

根津甚八・・・・

俳優さんの根津甚八さんでも、真田十勇士の根津甚八でもありませぬ。

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おおっこれは。

ガタピシと、開けるのに苦労する障子戸の先には三畳ほどのタタキに木のカウンター。

その奥に六畳ほどの座敷があります。

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女将さんが一人、先客の女性とお話をしていました。

カウンター左端の角に着座。

 

いい雰囲気です。

「今日は寒いですね。もう少し暖房効かせましょうか?」と女将

「ああ、大丈夫です。熱燗でももらって温まろうかな」

 

メニューは、お店に合わせて渋いラインナップです。

いいじゃないですか。

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残念ながら本日は燻製が終わってしまったとのことで、

奴にじゃこのせをお願いしました。

 

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うんうん、これこれ。

この木のカウンターにはこういう素朴な肴が似合う。

 

女将さんの手があいたのでちょっとお喋り。

あんまり引き留めちゃ悪いもの、奥のおひとりがいらっしゃるから。

 

まる「随分と古い建物みたいですけど、どのくらい前のものなんですか?」

女将「110年くらい前のものだそうです」

まる「ええっ 110年っていったら明治でしょう? 

   夏目漱石が人力車に乗ってた時代ですよね。

もう「灯も行灯かな」

女将「そうですね、当時は暗かったでしょうね。

   私は22年前に引き継いだんです。その前もこんな感じのお店だったとかで、

   不動産屋さんからは (修理しないで) そのまま使うのが条件だったんです」

もう「凄いなそれは」

女将「建具がガタついているから寒いんですよね。大丈夫ですか? 寒くないですか?」

 

我々は厚着ですが、女将さんはジーパンに前掛けに上着はかなり薄着だし、やせ型の体形で寒そうです。

 

 

 

ライトが暗めなのが雰囲気があります。

まるで時代劇-池波正太郎の世界。

障子戸をガラリと開けて剣客商売の秋山小兵衛がぶらり入ってきそうです。

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だって、この障子よ。

障子一枚だもの、やっぱり寒いわねぇ。

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床のコンクリートも斜めになったままだったり、なかなかのレトロ感。

熱燗とめざしがこよなく似合う店。

 

奥のご婦人と目か合いました。私たちと同年代かな?

ご婦人「どちらから?」

まる 「渋谷区の〇〇からです」

ご婦人「あらぁぁぁ、私も昔住んでいたんですよ。もう20年くらい前。

    それから根津に引っ越してきたんですけどね、あの辺随分変わったでしょうね」

 

その方は、私たちの近所に住んでいらしたそうで、

パスタ屋さんはまだある?とか、あそこは美味しいのよ とか、地元の話に花が咲く。

女将さんは、静かにニコニコ笑って やりとりを聞いている。

話が、地域猫の世話iに転じると、女将さんがおっしゃいました。

 

女将「ここでも猫、飼っていたんですよ。昨年亡くなってしまったんですけどね」

もう「ああ、猫ちゃん似合いそうだ」

女将「家の方においておいたんだけど、私の後をついて店まで来るようになって、

   障子の向こうでお座りして待ってるの。

   ご飯屋さんだからダメって言っていたんだけれど、猫好きさんもいるしね。

   いつのまにか我が物顔で座敷で丸くなっていたり・・・。」

まる「今はもう・・・」

女将「そうなんです。他の猫を追っかけていって車にね」

まる「あるんですよね、盛りの頃には」

女将「常連さんで猫が大っ嫌いな方がいらしたんだけど、その人になついてしまって。

   その方も情が湧かれたんでしょうか、とても可愛がってくださって。

   亡くなったと聞いて、その方がワンワン泣くこと泣くこと」

もう「僕も動物ダメだったんですけれど、懐かれるとあんなに可愛いものだったんだと知りました」

 

ぴ~の話になったりして、座がちょっとしんみり。

 

まる「・・・もう、猫ちゃん飼わないんですか? ホントにこのお店にぴったりだけれど」

女将「ええ、まだ乗り切れてないしね。やっぱりねぇ」

 

ダメだこの話題は、と話を変える。

 

まる「実は初めてこの路地を通って『あれ? このお店テレビで見たような気が』と思ったんです」

女将「何の番組でした? 雑誌とテレビは大勢いらっしゃって」

まる「さて何だったかな?」

もう「やっぱりテレビは大好きでしょうね、こういう雰囲気のある店に目がない」

女将「最初はお断りしていたんです。私は派手なのが出来なくて。

   でもその内、いきなりお店にカメラを持っていらしたりして、断り切れなくなって」

もう「ええっ? アポなしで突然ですか? それは随分だな」

まる「そういうのって一つ受けると、次 次 次になるんですよね、それにしても強引ね」

女将「まあ、仕方がないと思いますけれどね」

 

後からわかったんですが、私たちが見たのは宝缶酎ハイの、あの番組でした。

いきなりカメラはこの番組ではないでしょうが。。。

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女将さんの立っている所は、土間にすのこを引いたところなんですが、

料理を作ったりするのに奥と土間とを何十回も往復されます。

土間と座敷は、何しろ昔の建て方ですから40㎝以上の段差はあるでしょう。

それを降りたり登ったり、、、太っていてはとても出来ません、膝にきてしまうもの。

 

まる「上り下り、大変そうですよね。膝とか大丈夫ですか?」

女将「そうですね ( ´艸`) でももう慣れました」

まる「私にはとても出来ないなぁ。やっぱりリフォームしたくなっちゃうから、

   ここをお借りしてお店は出来ないなぁ」

 

そんな話で大笑いしていると、奥の座敷にお客さまがいらしたので、

それを期に失礼することにしました。

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店を出て振り返る。

にゃんこがいまにも現れそうな気がする。

障子の前にチョコンと座り、常連さんが戸を開けてくれるのを待つんだろうな。